介護・障害福祉現場のAI活用実態調査:約8割の職場でルールなし、従業員満足度向上には「年収アップ」より「AI活用ルール整備」が効果的

介護・障害福祉現場のAI活用実態を徹底調査

介護・障害福祉の現場では、生成AIの導入が急速に進む一方で、その適切な利用に関する課題が浮き彫りになっています。株式会社パパゲーノが運営する「パパゲーノAI福祉研究所」は2025年12月21日、介護・障害福祉現場における生成AI活用の実態調査報告書を公表しました。

この調査では、多くの職場でAI利用に関する明確なルールがないことや、個人での無料版AI利用による個人情報漏洩のリスク、さらには従業員満足度とAI活用ルールの意外な関係性などが明らかになっています。

調査概要と背景

本調査は2025年11月25日から12月6日にかけて、Googleフォームによるオンラインで実施され、184名の福祉従事者から有効回答を得ました。回答者の多くは就労継続支援B型(29.3%)、就労移行支援(15.2%)、児童発達支援・放課後等デイサービス(14.7%)に勤務しています。

近年、「生成AI」や「ChatGPT」といった言葉が福祉分野でも浸透しつつありますが、「何から始めればいいか分からない」「個人情報の扱いは大丈夫か」といった期待と不安の声が聞かれます。こうした背景から、現場でのAI活用実態を把握し、業界全体がAIと正しく向き合うための指針作りに貢献することを目的に本調査が実施されました。

現場でのAI利用状況

AI使用頻度と利用開始時期

調査によると、回答者の半数以上(55.4%)が週3回以上AIを使用しており、週1〜2回程度使用する人を含めると、71.2%が週に1回以上生成AIを利用していることが分かりました。

生成AIツール使用頻度

また、生成AIを使ったことがある回答者のうち40.7%が2025年から使い始めており、この1年で利用者が急速に増加している傾向が見られます。

生成AIを使い始めた時期

個人利用の多さと情報漏洩リスク

生成AIを利用したことがある回答者のうち、44.4%が個人で無料版のサービスを利用していることが明らかになりました。個人で有料版を利用している人も26.5%おり、事業所の管理外での利用が多数を占めています。これは個人情報漏洩のリスクが極めて高い状態を示唆しています。

生成AI系のサービスの利用環境

法人格別に見ると、社会福祉法人では68%が個人で無料版AIを利用しており、最も顕著に無断利用が見られる結果となりました。

勤務先の法人形態とAIサービス利用状況

AIの利用目的と記録作成への活用

主な利用目的としては、プライベートな利用(趣味、雑談など)が11.2%、会議録・議事録の作成が8.5%、マニュアル・手順書の作成が7.9%などが挙げられました。

特筆すべきは、利用者に関する記録や計画書の作成に生成AIを使用したことがある人が48.2%に上ることです。要配慮個人情報を含む支援現場の情報をAIに入力しているケースも少なくないことが伺えます。

職場のルールと従業員満足度

ルール不在と「シャドーAI」

生成AIの活用が広がる一方で、職場で明確なAI活用のガイドライン・ルールがあるのはわずか19.8%にとどまります。「ない」と回答した人が69.1%、「分からない」が11.1%を合わせると、80.2%の職場でルールが未整備の状態です。

生成AIの使用について、あなたの職場では明確なルールやガイドラインがありますか?

さらに、記録等への生成AI利用について上司に報告・相談している人は41.4%のみであり、事業所が把握していない「シャドーAI」の存在が浮き彫りになっています。生成AIに関する職場のルールづくりは急務と言えるでしょう。

記録等への生成AI使用について、上司や同僚に報告・相談していますか?

従業員満足度への影響:「AIルール整備」が「年収アップ」の約2.2倍効果的

法人形態によって従業員満足度(eNPSスコア)に大きな違いが見られました。一般社団法人・一般財団法人(eNPS: 21.43)とNPO法人(eNPS: 18.75)が高いスコアを示す一方で、社会福祉法人はeNPS「-48.28」、医療法人は「-66.67」と、批判者の割合が非常に高い結果となりました。

重回帰分析の結果、AI活用ルールの整備が従業員満足度(NPS)に与える影響は、年収アップの約2.2倍であることが判明しました。これは、「給料が低いから従業員満足度が低い」という従来の考え方に一石を投じるものです。AI活用ルールの整備は、組織の方針の明確さや新技術への前向きな姿勢、スタッフへの配慮として、従業員満足度に大きく貢献していると考えられます。

重回帰分析の結果

研修ニーズと専門職としての懸念

9割超が「AIの使い方を学ぶ機会が必要」と回答

回答者の92.9%が「AIの使い方」を学ぶ機会が必要だと感じており、AI関連研修への参加意向も88.3%と非常に高いことが分かりました。学びたい内容としては、生成AIの適切な使い方(プロンプトの書き方など)、福祉・介護現場でのAI活用事例、生成AIの限界とリスク(ハルシネーション、バイアスなど)、個人情報保護とAIなどが挙げられています。

福祉・介護の専門職向け研修で学んだAI関連の内容

AIへの過度な依存による思考力・判断力低下への懸念

46.2%の回答者が、生成AIに頼りすぎると専門職としての思考力や判断力が低下すると実感していることも明らかになりました。

生成AIに頼りすぎると専門職としての思考力や判断力が低下する

調査結果からの提言

本調査結果を踏まえ、パパゲーノAI福祉研究所は福祉現場の経営者・管理職に対し、以下の3点を提言しています。

  1. 事業所でのAI活用ルールを明確にする
    既にAIが現場で活用されている現状を踏まえ、安心してAIを活用できる環境を整備するため、どのような場面でどのように使ってよいかを明示することが重要です。特に社会福祉法人・医療法人では、ルール整備が従業員満足度向上に繋がる可能性が示唆されています。

  2. 「AI導入で大きな変更が必要」と感じさせない
    AIは業務を根本から変えるものではなく、日々の業務を少し楽にするツールとして位置づけ、段階的な導入や既存業務に馴染みやすい形での活用が望ましいとされています。

  3. 支援現場での「AIの正しい使い方」の研修に投資する
    現場の学ぶ意欲は非常に高く、生成AIの基礎や情報セキュリティ研修を通じて、事故を未然に防ぐための投資が求められます。

本調査のデータは、以下のダッシュボードで可視化されています。

また、調査結果のローデータ・分析結果データは「パパゲーノAI福祉研究所」にて公開されており、介護福祉業界のAI活用の発展に寄与する目的であれば自由に再解析が可能です。活用する際は「パパゲーノAI福祉研究所」と出典を明記するよう呼びかけられています。

生成AIで個人の可能性を広げる

株式会社パパゲーノについて

株式会社パパゲーノは、「生きててよかった」と誰もが実感できる社会を目指し、「リカバリーの社会実装」を事業を通して行う会社です。精神・発達障害のある方を対象とした就労継続支援B型事業所「パパゲーノ Work & Recovery」の運営や、支援現場のDXアプリ「AI支援さん」の開発・提供を行っています。

  • 会社名: 株式会社パパゲーノ

  • 所在地: 東京都杉並区上高井戸1-13-1 ルート上高井戸ビル 2階A号室

  • 代表者: 代表取締役CEO 田中 康雅

  • 事業内容: 就労継続支援B型事業所「パパゲーノ Work & Recovery」の運営、AI支援さんの開発、企業のDX支援

  • 公式ホームページ: https://papageno.co.jp/

  • 公式YouTube: https://www.youtube.com/@papageno_jp

  • パパゲーノAI福祉研究所: https://ai-fukushi.net/

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