琉球・沖縄の伝統的な食文化、その文化財的価値に迫る調査報告
一般財団法人 沖縄美ら島財団は、文化庁の補助事業「食文化ストーリー」創出・発信モデル事業として、「琉球・沖縄の伝統的な食文化」に関する詳細な調査を実施し、その成果を報告書にまとめました。この調査は、琉球・沖縄の食文化が持つ文化財としての価値を明らかにし、将来的な文化財登録を目指すものです。
調査は、研究者や琉球料理ユネスコ無形文化遺産登録推進委員会と連携して行われました。文献や史料の調査に加え、沖縄在住の10代から90代までの幅広い世代を対象に、島ヤサイや「クスイムン」、行事食、そして食文化の継承に対する意識についてアンケート調査が実施されました。さらに、旧盆行事の現地調査も行われ、琉球王国時代から2024年までの「食文化略史」も巻末資料として収録されています。

祖霊祭祀の行事食と「医食同源」の思想
琉球・沖縄の食文化は、祖霊祭祀の行事食と「医食同源」の食思想が深く根付いていることが特徴です。
祖霊祭祀の代表的な供物には、「ウサンミ」と「ジューバク」があります。ウサンミは中国の三牲(豚・鶏・魚)の影響を受けたとされる供物で、ジューバクは豚肉や魚のてんぷら、豆腐、煮しめなどを重箱に詰めたものです。これらは日本の慶応料理の影響も受けつつ、沖縄県内に広く普及・定着しました。平安座島で供される塩漬けの干し魚「スーシカー」や、石垣島でみられる霊供盆など、島々によって多様な供物が育まれています。

また、沖縄で古くから使われる「クスイムン(薬になる食べ物)」や「ヌチグスイ(命の薬)」という言葉は、中国の「医食同源」の思想に通じます。琉球近世期後半には、国王の食事療法指導書として『御膳本草』が献上され、この思想は庶民にも広まりました。亜熱帯の環境を活かした「医食同源」の食思想は、今日まで養生食として人々の生活に深く根付いています。

島野菜の利用と世代間の継承課題
調査では、沖縄県が紹介する伝統的農産物「島ヤサイ」28品目について、世代ごとの利用状況も明らかにされました。認知度、食経験、調理経験、使用頻度、利用理由のいずれにおいても世代間の違いが見られ、特に若い世代では島野菜を使った食文化があまり根付いていない傾向が確認されています。
10~20代は料理をする機会が少ない一方で、30~60代では日常的に島野菜を取り入れている様子がうかがえます。利用理由についても、若年層は「好きだから」といった嗜好が中心であるのに対し、高齢層では入手しやすさや機能性の高さなど、健康を意識した理由が多く挙がりました。
これらの結果から、島野菜を広く普及させ、若い世代へ受け継いでいくためには、それぞれの生活スタイルに合わせた体験の場づくりや、分かりやすい情報提供が重要であると考えられます。
調査報告書の詳細
今回の調査の詳細は、以下の報告書から確認できます。
食文化ストーリー調査報告書
沖縄美ら島財団は、「美らなる島の輝きを御万人(うまんちゅ)へ」という理念のもと、沖縄美ら海水族館や海洋博公園、首里城公園などの管理運営を通じて、沖縄の豊かな自然と文化資源の保全・活用に取り組んでいます。