狩りバチ「マルモンツチスガリ」の麻痺毒を解明!新規ペプチドの発見で生物戦略の謎に迫る

狩りバチ「マルモンツチスガリ」の麻痺毒に新発見!

一般財団法人沖縄美ら島財団総合研究所、国立研究開発法人産業技術総合研究所、国立大学法人熊本大学、国立大学法人東北大学からなる共同研究グループが、狩りバチの一種であるマルモンツチスガリの麻痺毒の謎を解き明かしました。この研究により、これまで知られていなかった新規の麻痺ペプチドが発見され、その機能が明らかになっています。

なぜハチ毒の研究が重要なのか?

ハチ毒をはじめとする生物毒は、生物農薬や医薬品の開発に役立つ可能性を秘めており、世界中で活発な研究が進められています。これまでに、アリ、ミツバチ、スズメバチといった身近なハチの毒については、その成分や性質、遺伝子が広く解明されてきました。特に、獲物を狩る「狩りバチ」の毒は、その生態と毒の関連性において大きな注目を集めています。しかし、マルモンツチスガリが属するツチスガリの仲間については、これまで詳細な研究が行われていませんでした。

新規麻痺ペプチド「Cj 2」の発見

研究グループは、マルモンツチスガリが毒を作る器官を詳しく調べ、そこで働いているすべての遺伝子(トランスクリプトーム)と、含まれるすべてのタンパク質(プロテオーム)を統合的に解析しました。この徹底的な分析の結果、進化的に近いアリやミツバチからは報告されていない、全く新しい11種類のペプチドおよびタンパク質(Cj1-11)の遺伝子を発見しました。

さらに、毒液の主要成分の一つとして見つかった「Cj 2」というペプチドを人工的に合成し、ミールワームに投与したところ、ミールワームは麻痺しました。興味深いことに、このCj 2は、アリやミツバチの毒に見られる抗菌活性や溶血活性、他の狩りバチの毒が示すニコチン性アセチルコリン受容体を制御する活性を示しませんでした。このことは、Cj 2が非常に特異的な麻痺毒であることを示しています。

マルモンツチスガリの独自の進化

この特異な麻痺毒とその遺伝子の存在は、マルモンツチスガリがアリやミツバチと遺伝的には近い背景を持ちながらも、獲物を麻痺させて狩りを行うという独自の生態を獲得する過程で、麻痺ペプチドの遺伝子を独自に進化させてきたことを示唆しています。

マルモンツチスガリの生態

マルモンツチスガリは、東アジアの温帯から亜寒帯地域に生息しています。メスのマルモンツチスガリは、コハナバチを捕獲し、産卵管が変化した針を使って毒液を注入し、獲物を麻痺させます。その後、土の中に掘った巣に麻痺した獲物を運び込み、その上に卵を産み付けます。孵化した幼虫は、麻痺した獲物の体液を吸って成長し、最終的には獲物を食べつくして蛹になり、成虫へと羽化します。

沖縄の豊かな生物多様性が研究を後押し

生態がまだ詳しく分かっていない狩りバチや寄生バチの生物毒に関する研究は、沖縄が持つ豊かな生物多様性を背景に、多種多様なハチ毒の存在とその役割を明らかにすることに貢献します。この研究は、毒を利用した生物の巧みな戦略や、多様な生物が織りなす沖縄の自然の魅力を伝えることにも繋がるでしょう。

また、沖縄県の生物多様性の豊かさは、現在、沖縄県が誘致を進めている国立自然史博物館の設立地の適性の一つともされています。

論文情報

本研究成果は、国際学術誌「Toxins」に掲載されました。

  • 雑誌名: Toxins

  • 論文名: Integrated Venom Gland Transcriptomic and Venom Proteomic Analyses of the Digger Wasp Cerceris japonica (マルモンツチスガリ毒嚢のトランスクリプトームおよびプロテオーム統合解析)

  • 著者名: Kazuma Kohei, Naoki Tani, Katsuhiro Konno, Migaku Kawaguchi, and Hidetoshi Inagaki. (数馬恒平、谷直紀、紺野勝弘、川口研、稲垣英利) 責任著者

  • 受理日: 2026年7月13日

  • 論文リンク: https://www.mdpi.com/2072-6651/18/7/307

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