JCHO北海道病院が厚生労働省事業に採択!AIカルテ下書きで医療現場の負担軽減と患者との対話回復へ

医療現場の課題と今回の取り組みの背景

現代の医療現場では、医師の長時間労働が深刻な問題となっています。特に、カルテ入力などの記録業務は大きな負担となっており、これが医師と患者の対話時間を圧迫する一因とも言われています。このような状況を改善するため、JCHO北海道病院はAI音声認識システム、スマートフォン、電子カルテシステムの活用を目指し、厚生労働省の事業に応募しました。

今回の採択は、診察から記録までの一連の業務をAIで効率化し、医師の業務負担を軽減するとともに、患者と直接向き合う対話時間を確保することで、医療の質と患者満足度の向上を目指すものです。

画期的な実証内容とは

この取り組みでは、診察室の会話をスマートフォンで入力し、医療情報保護要件に準拠した院内セキュア環境でAI音声認識システムがテキスト化します。さらに、院内ネットワークに設置されたオンプレミス生成AIサーバが解析・要点整理を行い、カルテの下書きを生成することで、全ての処理が院内で完結します。

スマートフォンを音声入力端末として活用し、オンプレミス生成AIによるSOAP草案作成、そしてSMART on FHIRによる電子カルテへの取り込みを一連で実現する医療機関は、国内初とされています。

各社の役割

  • JCHO北海道病院: モデル医療機関調査支援事業の主体的な実施・展開

  • プレシジョン: AI音声認識システム「今日のAI音声認識」の開発・提供

  • シーエスアイ: 電子カルテ MI・RA・Is V との連携構築

  • NTTドコモビジネス: スマートフォンの導入・運用支援、利用環境の提供・構築

システム概要

AI音声認識システム「今日のAI音声認識」

「今日のAI音声認識」は、医師と患者の会話からカルテ下書きを生成する医療特化の音声認識ソリューションです。内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム」(SIP)で作成されたLLM(大規模言語モデル)を活用しており、高精度な音声認識と要点整理を実現します。

今日のAI音声認識 利用イメージ

紹介動画はこちら: https://youtu.be/Y0wRXKHUBso

電子カルテとの連携

AIが生成したカルテ下書きは、シーエスアイの電子カルテ「MI・RA・Is V」へ簡便な操作で取り込むことができます。連携にはSMART on FHIR形式が採用されており、安全かつ相互運用性の高いデータ連携が実現されています。

スマートフォンの活用

NTTドコモビジネスが提供するスマートフォンが診察室での入力端末として利用されます。地域医療機能推進機構が定める運用方針に基づき、セキュリティを確保した利用環境が提供され、病院や職員が安心してスマートフォンを利用できるよう支援します。

期待される効果

この取り組みによって、医療現場には様々な良い変化が期待されています。

医師の業務負担軽減と患者中心の対話回復

LLMを活用した診療記録支援は、海外の事例でも記録業務時間の大幅な削減が報告されています。この実証でも同様の効果が期待され、医師が患者との対話により多くの時間を割けるようになるでしょう。これにより、患者はより安心して治療を受けられるようになります。

別の医療機関での参考データとして、再診患者50名を対象にクラウド版「今日のAI音声認識」を使用した場合、患者の入室から次の患者の入室までの時間が20%以上短縮されたという報告もあります。

項目 所要時間
音声認識を使用した場合 10分43秒
音声認識を使用しない場合 13分9秒

待ち時間の減少

診療記録の作業が軽減されることで、医療従事者は患者一人ひとりに対する対応が迅速化し、医療のスムーズな提供が可能になります。結果として、患者の待ち時間短縮にもつながるでしょう。

場所を選ばない医療DXの実現

スマートフォンによる音声認識を起点としたこの取り組みは、従来の場所が固定化された医療体制を変革し、より効率的なオペレーションを実現します。

堅牢な情報管理体制の実現

音声データを含む診療情報の処理が院内のみのセキュアな環境で完結するため、患者の個人情報が外部のクラウドに送信されることなく、高いセキュリティで保護されます。

今後の展望

JCHO北海道病院、プレシジョン、シーエスアイ、NTTドコモビジネスの4者は、この事業を通じて得た知見をもとに、システムの更なる発展的な検討・開発を進めます。将来的には、看護記録やリハビリ記録など他の業務への展開や、JCHOグループ病院、さらには全国の医療機関への展開も視野に入れています。

JCHO北海道病院の古家 乾院長は、「日本語特有の文脈理解、日本の文化、医療および診療報酬制度を含めた膨大な医療データをAIが理解できるようになれば、医療情報の世界でAIがデジタルツインとしての役割を果たせる」とコメントしています。

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