共同開発の背景と「SOERU」への想い
建設・設備業界では、労働生産性の向上、人材不足、そして熟練技術の継承といった構造的な課題が喫緊のテーマとなっています。東光電気工事では、熟練技術者の経験と高度な判断が求められる電気設備施工業務において、これらの課題に直面していました。そこで、AIの活用による業務効率化、省力化、そして技術継承の仕組みづくりに着手。2023年8月からは松尾研究所と共同で「次世代設備設計支援システム」の研究開発を進めてきました。
約5か月にわたる現場業務の綿密な分析と定量評価を経て、現場のリアルに寄り添った開発要件が精緻に設計され、この度「SOERU」が誕生しました。
「SOERU」という名称には、「人に添える・寄り添う」という意味が込められています。AIが単なるツールではなく、“人に寄り添い、判断を支援する伴走者”となることを目指して開発されました。松尾研究所が持つAIの知見と、東光電気工事の豊富な現場知が融合された結果と言えるでしょう。
「SOERU」の主な機能
「SOERU」の第1弾として、AI技術を活用した「見積用設計図作成支援ツール」が開発され、順次現場への導入が進められています。主な機能は以下の通りです。
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図面認識AIによる設備設計図の情報抽出をサポート
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法令の準拠やビルごとの暗黙的なルールを踏まえた電気設備の自動配置
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暗黙知を踏まえたチャットボットによる電気設備設計のサポート
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設備の配置根拠や対象ビル等の情報に基づく質疑応答書の自動生成
このシステムは、単なる効率化に留まらず、若手技術者の育成を加速させたり、安全や品質に関するリスクを事前に察知(予兆検知)したり、組織全体のデジタル活用能力を高めたりする可能性も秘めています。
今後の展望
松尾研究所と東光電気工事は、今後も連携をさらに強化し、「SOERU」を他の領域へも展開していくことを検討しています。建設・設備業界全体の労働生産性向上と技術革新を推進し、10年先を見据えた新たな価値創造に挑んでいくとのことです。
松尾研究所について
株式会社松尾研究所は、東京大学工学系研究科の松尾・岩澤研究室と共に、大学を中心としたイノベーションのエコシステムを構築・発展させることを目的として設立されました。アカデミアで生まれた研究成果や技術を社会に広く普及させることで、日本の産業競争力向上に貢献しています。