陸上養殖の新たな時代を拓く
世界の水産物需要が増加する一方で、海洋環境の変動や生態系への影響から、陸上養殖への転換が加速しています。しかし、従来の陸上養殖システムには、以下のような課題がありました。
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高度な専門知識が必要とされる
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施設ごとのカスタム設計により、拡張や変更が難しい
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濾過などの水処理設備への初期投資が高額である
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立ち上げまでの期間が長く、事業リスクが大きい
これらの課題は、大規模で集約型のカスタムモデルの構造的限界を示しており、小規模から中規模の陸上養殖が都市部や内陸、島嶼地域などで普及するのを妨げていました。
AQUAXMGRIDがもたらす革新
琉球大学が開発したAQUAXMGRIDは、飼育水槽と水処理を完全にモジュール化・分離した分散型アーキテクチャを採用することで、これらの課題を解決します。

主な特長は以下の通りです。
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モジュール化された飼育水槽・水処理ユニット
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ユニット間を相互連結する標準接続インターフェイス
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再設計不要でユニット追加による容易な拡張
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複数種生産に対応した柔軟な運用構成
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水処理の過剰設計を回避し、初期投資を低減
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トラブル発生時のユニット切り離しによる高いレジリエンス
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段階的なスケールアップで財務リスクを軽減
このモデルは、USBなどのコンピュータ業界における標準化がもたらした産業変革と同様に、陸上養殖に新たな市場とイノベーションを生みだすことを目指しています。

水槽には多くの魚が元気に泳いでいます。

経済・社会的インパクトと今後の展望
AQUAXMGRIDイニシアチブが実施した調査によると、小規模陸上養殖は2050年までに年間5,490万トンの生産量、27.6兆円の市場規模、1,599万人の雇用創出へ成長することが予測されています。分散型の陸上養殖は、地域コミュニティや離島、内陸、都市部、家庭など、あらゆる場所での持続可能な食料生産インフラを実現し、地域の食料安全保障を強化します。また、経済を支え、輸送由来のCO₂排出削減にも貢献することが期待されます。
琉球大学は、国内外の企業・研究機関と連携し、2029年までのISO/TC 234(漁業・養殖分野)の国際標準化を目指しています。

主要なマイルストーンとして、技術標準およびリファレンスモデルの策定、規格団体の設立と規格策定、欧州先進企業・研究機関との共同検証、ISO提案・承認採択に向けた国際連携の推進が挙げられます。分散型陸上養殖技術の国際標準化を通じて、「どこでも・誰でも養殖できる社会」の実現を目指します。
本技術開発は、JST「共創の場形成支援プログラム」(JPMJPF2012)の支援を受けて実施されました。
AQUAXMGRIDイニシアチブの詳細については、以下のウェブサイトをご覧ください。